「これがこうで…ええと…」

人工の光に照らされている中、一人の女生徒が一枚一枚カードをめくっていく

「明日の恋愛運は…」

カードから見た運勢は悪い結果では無いようで、顔を綻ばせる

「明日のあなたは誰とも争う事無く意中の人とお話が出来ます…かぁ」

自分一人しか無い空間の中で一息つく

「岡崎くん…」



「意中の人と仲良くなれるおまじないは…」

さっきとは違う女生徒は本のページをめくる

「あ…ありましたっ。10円玉を横に五枚並べて呪文を唱えるだけですか」

女生徒は「簡単ですね」と呟きながら自分の財布から10円玉を五枚取り出して並べ始める

「イチュウノヒトトドッキリイチュウノヒトトドッキリイチュウノヒトトドッキリ…」

本に載っていて、当たる事が多いから信じているけど…たまに疑うような呪文がある

「これで上手くいくでしょう」

難しい訳でも無いおまじないだったにも関わらず一息つく

「朋也さん…」


龍虎かもしれない戦い




「ふえっくしゅっ!」

突然のくしゃみで目を覚ます

何か嫌な予感がしたはずだが、今のくしゃみで思っていた事が一緒に飛んでしまったようだ

何事も無い事を確認した後、時間を見ると遅刻でもなんでもない時間

ようするに、今から学校に向かえば朝のホームルームに余裕で間に合う時間

朝の気だるい体を起こし身を整える

「準備なんてしなくてもいいんだけどな…」

制服の袖を腕に通し、鞄を持ち上げ家を出る

受けても何もならない授業を受け、変わらない気持ちのまま春原の部屋に向かうだけ…

家を出た時の俺はそれだけしか思ってなかった



校舎に辿り着くが人の気配が無い

桜咲くあの坂道を登っていても人がいない

俺はおかしいと思い腕時計を覗きこむが、十分時間はある

「今日は休みなのか…?」

教師の話等聞かないし、行事なんて絶対見ないし覚えていないと言えるので、知らないのは当然か

まぁ、教室みて誰もいなかったら帰ろうと思い坂道を登る

「まっ…ここまで来たなら行くのも戻るのも同じ事だろう」


校舎の中に入るが生徒の姿が全くと言っていいほど見当たらない

本当に休校日なのか、ほとんど諦めながら自分の教室である扉を開ける

ガラガラガラ

教室の中には誰一人いなかった

いや、訂正…教室の中にはたった一人しかいなかった

短い髪で特徴性が高い白いリボンを髪に結んでいる女生徒がいた

「あ…岡崎くん」

確か委員長…そして杏の妹の椋…だったかな

「よう、委員長」

一言だけで挨拶した後は、自分の席に居座る

時間はもうすぐホームルームが始まる時間

本当に他の奴等はどうしたんだろうか…

こうして委員長は教室にいることだし、今日は休校日ではないはずだ

「あ、あの…岡崎くん」

「…ん?」

何時の間にか委員長が俺の隣に立っていた

「えと…あの」

まだホームルームは始まってもないからプリントという事はないはずだが…

「どうかしたのか?」

「いえ…誰も来ませんね」

「ああ、そうだな」

これだけで会話が見事に終わってしまった

委員長は顔を伏せてしまい、話を続ける様子はなかった

といっても話されてもなんて答えたらいいのかわからないけどな

あ〜それにしても暇だ

キンコーンカーンコーン

ホームルーム開始の鐘が鳴り響く

「あ、戻らないと…」

そう言い捨てると、委員長は自分の席へと戻っていく

いつもは狭く五月蝿い教室だが二人しかいないとなると広い

見事に誰も来ないのでいい加減帰ろうかと思った瞬間

ガラガラガラ

「ホームルーム始めるぞー」

この人数を見て何とも思わないのかこの担任は…というか教師はいたんだな

「きりーつ」

委員長の声がヤケに響く

そりゃあ、この教室に担任含めて3人しかいないから当然か

いつもは無視してもいいんだが、3人という状況で無視は流石にできないので従う

「れい!…着席」

「あ〜まず、岡崎と藤林が出席…その他全員が欠席っと」

出席簿をつけている担任からおかしい単語が耳に入ってくる

(全員が欠席…?)

「先生、みんなどうかしたんですか?」

委員長の藤林もおかしいと思ったのか、担任に質問の声をあげる

「ああ、そうだ。朝方に連絡があってな。全員欠席願いを届けてきて職員室は大忙しだったよ」


なぁ…?それ普通に学級閉鎖レベルじゃないのか?



「ちなみに、教師の方々は全員来ているんだが…今日の生徒登校人数は三人だからな」


オイ…チョットマテコラ

「このクラスで二人、そして二年生で一人。登校してる人数が人数だから三人同時に授業を受けさせよと学園長からのご命令だ」

ナニホザイテマスカ?コノセンセイサマハ…?

「こういう機会は滅多にないからな、仲良くしろよ」


OK…簡潔に


どう考えても


学校閉鎖レベルにしか思えないのだが、先生様方達は一体何を考えている?


そんな俺の心のツッコミに反応する訳無く、担任は話を進めていく

「そんな訳だ…入りなさい」

「はい」

担任の合図と共に教室のドアが開けられる

入ってきたのは知っている顔だった

「宮沢有紀寧と申します。今日は宜しくお願いします」

編入されたみたいに自己紹介をする宮沢

よく睡眠補給の為に旧校舎の資料室に行くのだが、そこで知り合った女生徒である

いつも不思議な感覚に包まれており、こっちの対応が困るくらいだ

「席は…そうだな。お前等三人しかいないから必要な道具を持って最前列に来い」

そうして担任は教卓の目の前にある中央列を指差す


そして座った場所

真中が宮沢、左が俺で右が委員長となった

この場所の場合でも寝れる事には寝れるが、人数の問題で目立ちすぎる

これはある意味で覚悟を決めないと危ないようだ…

そもそもこんな事になるのだったら…


途中で引き返してサボればよかった










お願いします、お願いですから勘弁してください…


なんで、午前中の授業だけであんなに疲れないといかんのだっ!

三年の授業に二年が混じるので正式な授業なんてやる訳もなく、まったりした授業だった

そんなまったりした環境で睡魔が襲ってくるのは当然だが

授業中、ピリピリした殺気みたいな物が教室を巡るから俺も教師もたまったもんじゃない

「あの…朋也さん」

宮沢が申し訳なさそうに尋ねてくる

(朋也さん…?)

ピクッと委員長の体が反応した気もするが気のせいだろう

「あぁ…どうした?」

「次の授業は何をやるのでしょうか?」

ここで一つ…自慢では無いが…

俺がそんな事知っている訳が無いっ!

散々サボったり寝過ごしたりを繰り返しているので何時の何時間目が何の授業なんてわかるはずもない

「俺もわからないが…」

そこまで言った時に気付く、委員長なら折れとは違って真面目に授業受けている訳だし委員長に聞けばいいんじゃないか

「っと…そうだな。委員長」

宮沢の隣に座っている座っている委員長を呼び出す

「はい?なんでしょうか岡崎くん」

(勝ちましたね…)

委員長の後ろで宮沢がニヤリって笑った所なんてみ、見てないぞ!?

「宮沢が次の授業を教えてほしいんだそうだ」

「あ、はい。え〜と…次の授業は数学ですね」

「あ、ありがとうございます」

本来、二年の授業を受けている宮沢

こんな形であれ、三年の授業を習うなんて難易度が高いだろう

この中で一番駄目なのは、二年の勉強すらまともにできない俺に違いないけどな


ガラガラガラ

「は〜い、授業始めるから席につきなさい」

入ってきたのは数学を担当する女性の教師

またつまらない授業を聞くのか…と正直嫌になる

「起立…礼、着席」

「はい、それでは教科書の…って言おうとしたけど」

やる気のかけらも無い俺だったが、教師の言葉に反応する

「実際…二年生も一人いる訳だし、授業はやらないでお喋りしちゃおうか♪」

「え?」

「はい?」

宮沢と委員長も声をあげて驚く

それでいいのか先生

それにしても好都合だった

お喋りということは授業はやらない訳だし、寝ていられるという事だ

この1時間を過ぎれば放課後になり、やる事がない俺は帰るだけだ

そうと決まった俺はすぐに机に伏せて目を閉じた







「―なんだ」

「―…ちょっと―だけど」

「私も―」

意識が目覚めるが、女性3人の声は今だに続いていた

それなりに眠ったと思ったが、あまり時間はたっていないのだろう

身を起こそうと力を入れた所に

「二人共、好きな人はいるの?」

「「っ――先生っ!?」」

顔を赤く染める二人の顔が想像できる

今、ここで起きた場合。俺も話に混ざることになってしまう

そんな事はごめんなので授業が終わるまで寝ているフリをする事に決めた

「いいじゃないのー、岡崎君だって寝ているんだから言っちゃえ言っちゃえ」

「うう…私は岡崎くんの事が好きなんです…」

今の声は委員長か…

へ〜…委員長は俺なんかの事が好きなのか…


ってちょっとまてっ!?


つい、声を上げてしまう所だった

こんな所で目覚める訳にはいかない

「その…私も朋也さんの事が―」

へ〜…宮沢も委員長と同じく、俺が好きなのか…


「って…ちょっとまてっ!?」

「きゃっ」

1度目は堪えたものの、2度目はしっかりと反応してしまう

ちょっとまてよ…委員長も宮沢も俺に好意を抱いてる…?

こんな俺を好いてくれる奴がいたなんて嬉しいといえば嬉しいが…ここにいる二人共というのは正直困る

それよりも…一番困るのは…

「…」

笑顔のまま表情が固まった教師

「あう…あうあう…」

ぷしゅ〜といわんばかりにオーバーヒートを起こしている委員長

「…」

顔を真っ赤に染めてはいるが、何も反応がない宮沢


これって…つまり

「その…岡崎くん。先生はいなくなるから頑張ってね」

凍っている教室という名の空間の中先生はサササと逃げるように出ていった…



反応してどうするよっ!?俺の馬鹿野郎!!


「岡崎くん…」「朋也さん…」

ジリジリと距離を詰めてくる二人に対して俺は動く事はできなかった


「「岡崎くん(朋也さん)はどっちがお好きなんですかっ!?」」

二人の声が丁度ハモる

普段怒らない奴が怒ると怖いと言うが…ちょっとこれは怖すぎではないだろうか

二人の体からなんとも言えない殺気が渦巻いている

「どっち…と言われてもな…」

正直、そんな感情は全くといっていいほど無かった

だが、二人の告白を聞いた時に俺の中で何かが変わり始めた



「折角占いで岡崎くんと二人っきりで学校生活が送れると思ったのに…」


「折角おまじないで朋也さんと恋仲になれるとおもってましたのに…」



二人の声を聞いて今日起こっている不思議の元凶という人間を二人見つけた

片方は出た答えのまるっきり正反対が巻き起こるという恐怖の占い

そして、もう一方は確実に未来を約束してしまうような呪いと言えるおまじない

そんな恐怖と呪いが同時に行われるなんて夢に思った事はないぞ

しかも、その二つは俺を中心に激しく渦巻いている

俺が取った行動は…

「あ、俺早退するわっ!」

「「あ…」」

ダダダダダダッ

勿論、脱兎の如く逃げ出す以外に何も選択肢無かった



ダダダダダダ

走りながら校内の様子を見ると嫌でもわかる

生徒は俺とあいつら以外、誰一人としていない

いるのは職員室に篭りきっている教師達

(…3人しかいないんだから休みにしろってんだよっ!)

階段を駆け下り、昇降口に辿り着くと思った時に違和感を感じる

「岡崎くん、逃がしません」

丁度俺からは見えない所から出てくる委員長と宮沢

「な…どうして」

自分はそれなりに足は速かったはずだったし、最短ルートを走ってきたつもりだった

なのに、女子二人に何時追いぬかれていたのか

「朋也さん、私達にはこんなものがありますよ♪」

委員長が持っていたのはトランプ

宮沢が持っているのはおまじないが幾つも載っている本

「そうです、私が占いで岡崎くんの場所を特定して」

「私が私達を朋也くんに会わせるというおまじないを行ったんです」



今の俺には見える…

委員長の背中には龍

宮沢の背中には虎

漫画でよくあるライバルの魂の背景のはずだが…


二足で立ちながら仲良く握手をしている獣が…俺には見えた


「というわけで覚悟してくださいね岡崎さん」

「はっきりとどちらとお付き合いをするか言ってくれるだけでいいんですから♪」

俺がどちらかの名前を選んだ瞬間に握手で繋がれた腕は断たれ、戦いが巻き起こるんだろうな

それ以前に、その元凶となった自分が一番危険なのは百も承知だ

やはりここは妥協案で行くか…

「どっちも…というか。二人とも俺にとっては『普通』なんだよ、だから―」

これを機に二人を見て、気に入ったほうと付き合う。と言おうとした瞬間…

「「そんなの…」」

「「認めませんーーーーーーっ!!!」」

「って、お前らなにを…うわぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!」







僕の名前は春原陽平

珍しく余裕の登校するはずだった僕を襲ったのは最初に腹痛だった

慌ててトイレに駆け込み、用を足している最中。これまた突然吐き気が僕を襲った

頭痛は頭が割れるほど、喉の痛み、咳、鼻水、全部が全部酷かった

そして…僕は学校を休んだ

サボリでも無く、これは絶対に行けない状態だったから

何かに苦しむ唸り声が寮の全てを飲みこんでいた


次の日…

昨日の症状が何事も無かったかのようになんともなかった

ははは。と笑いながら登校

本来話すはずもない奴等と昨日の症状について話しこんだ

どうやら、教師達は全員無事で。3人の生徒だけが登校したようだ

一日の休みの後、また暇で寝るだけの学校に来た僕を待っていたのは…


「お前…ゲームソフト『うらない』の?」

「う…うらない…?ひっ…ひいぃぃぃぃぃーーーーー!!?」


「失礼します」

『おま』えが陣内(『じ』ん『ない』)か、野球部に入りたいってのは」

「うっす、よろしくおねが―」

「お・・・おまじない…?ひっ…ひいぃぃぃぃぃーーーー!!?」


何かに怯えるように変わってしまった岡崎の姿だった


しかし…今の岡崎の姿は見慣れている…というかなんというか、それに近いようなものを感じた




お わ っ と け


〜あとがきの詩〜

ははは…以上AONさんリクエストSSでしたっ!

有「あの…」

椋「これは…」

朋「ギャグなのか、シリアスなのかなんだか意味わからんな…」

そう言われても…最初考えついた話からどんどん脱線していってこんな形に・゚・(ノД`)・゚・

有「そもそも、私の性格や口調おかしくありませんか?」

うっ…そ、それはね。実は貴方を書いたSSはこれが初めてだったりするんですよ…だから。その仕方ないというか(汗

椋「ギャグ物にしては地の分が多すぎると思います」

朋「これじゃ、本当に意味わからない物だよな」

春「僕なんて、最期の結末を話しただけで終わりじゃないですかっ!?」

朋・有・椋「「「貴方(お前)はいいんだ(いいんです)」」」

それでは、次回のリクエストをお楽しみにどうぞ

ヘタレ文に近いですが、お読みくださりありがとうございました〜!










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